~宮台真司さんのアーカイブから学ぶ~
ダースレイダー×宮台真司さんによるNetflixで話題になった
アニメ「ミッドナイト・ゴスペル」「攻殻機動隊S.A.C.2045」などを題材としたトーク
2020/6/1
(前段部分の「アメリカ情勢」に関するト-クをまとめ)
このページに掲載するまとめは、上記トークの序盤となる「アメリカの社会情勢に関する部分」
をまとめたもの。本題トーク内容の要諦は、以下を参照されたし。
■『ミッドナイト・ゴスペル』映画批評
■『攻殻機動隊 SAC_2045』映画批評
<一日前に行われたダースレイダーさんと北村雄二さんのトーク内容>
a)ミネアポリスつていう街がいろんな人が住んでいるところで、警察も黒人もたくさんいて
オバマ時代にも人種差別に対するガイドライン的なものがはいったが、トランプにより
骨抜きにされてしまったという背景がミネアポリスにはある。
b)民主党のバイデンが、副大統領候補に指名する可能性が高いと言われている
エイミー・ジーン・クロブシャーがミネソタ州の検事だった時代に、マイオン・バレル事件の
扱いを誤っていたことに対し民主党内にて問題意識が高まっている。
c)黒人差別が日常的に存在している
d)その上で、マーティン・ルーサー・キング牧師(※1)の言葉(※2)にある
Riotというのは”Language Of The Un-Heard”で、全米で起こっている出来事をみて、あの暴動の
本質的なものは、これまでアメリカという国によって無視されてきたものものが実体化したものだ
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※1
マーティン・ルーサー・キング牧師とは
「アメリカの黒人運動の指導者で牧師。1955年のアラバマ州モントゴメリーでの
バス・ボイコット運動にかかわり、公民権運動の指導者となる。
常に非暴力の方法をとり、ボイコット戦術や、シットイン(座り込み)などによる
差別への抵抗を指導し、その人格と弁舌で親しまれた。奴隷解放宣言が出されて
から100周年にあたる1963年8月には画期的なワシントン大行進を成功させ、
翌年の公民権法成立という成果を上げた。1964年には、ノーベル平和賞を授与された。
この頃から深刻となったベトナム戦争の反対運動にかかわるようになった。
1968年、全国遊説の途中、テネシー州メンフィスで人種主義者の凶弾に倒れた」
※2
“Riot: The language of the unheard” And a part often we miss when
people uses it is the part about unheard. This is the time we all have to listen,
we have to listen to the cries and coming out of the hearts and souls of
my young brothers and sisters and all of the others in the street of America right now.
「暴動、それは聴く耳を持たない言葉」だと。そして人々がこの言葉を用いるときに
よく漏らしてしまうのが、“聞く耳を持たない”という点です。
私達は今回のことで、耳を傾けなければなりません。
今のこの瞬間、全米に繰り出す若い兄弟姉妹たちの泣き叫ぶ声を、
腹の底から、魂の底から込み上げてくるものに、耳を傾けなければなりません。」
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<宮台さんさんのトーク>
・アメリカは今、落目の国。多くの人たちはアメリカは落ちぶれつつあると思っている。
特に、デトロイトを中心とするラストベルト製造業地帯、このあたりの人たちは、
民主党支持者が大半だった。この人たちは、軒並み、トランプ支持に移っている。
これは、トランプが古き良きアメリカ、つまりみんなが輝いていた時代をもう一度取り戻そう
という明るい理念に魅かれたというのもあったろうが、それよりもむしろ、今、失われてしまった
自分たち、アイデンティティ、経済状況などを誰が失わせたのかという帰属処理をしているのが
ポイント。
・トランプは、上記の人たちに対し、悪役探しをすることによって溜飲を下げるという戦略をとって
る。これを自覚しているということが考えられる。
それの理由は
①製造業の時代をもう一度取り戻すことができないということは、トランプも周りの助言があるは
ずなのでわかるはず。
また、製造業のアウトソーシングあるいは、外に工場を建てて作らせるということによって
アメリカの自動車産業が低下したとか、失業率が上がったというのは統計的には間違いで
実はオートメーション化によって人が不要になったことが最大の要因だということ。
②自動車産業の労働者を中心として、オピオイド中毒が、10年前から徐々に蔓延して
年間4、5万人が死ぬという状況
・トランプは、上記のような、排外主義・反中国・人種主義などの彼らの念・痛みを利用して、
戦略的に彼らをターゲットして釣ろうとしていることは明白である。
トランプは、上記のように、釣るターゲット及びターゲットに向ける敵の設定は、するけれど、
ルネサンスのビジョンは全くない。・
・マイケル・ムーアのボウリング・フォー・コロンバイン(他出演:チャールトン・ヘストン)
という映画がある。
マイケルムーアが、銃の保有率はカナダのほうが高いのに、銃の犯罪によって死ぬ人は、アメリカの
ほうが3桁以上多いと考え、これはどういうことかということをベースにして上記の映画をつくっ
た。
・マイケルムーアは、チャールトン・ヘストに、「銃が規制されないことがアメリカ社会の自殺行為な
んだ」 といったことに対して、チャールトン・ヘストは、「銃をもつということは、アメリカの
精神的アイ デンティティである。銃をもたないアメリカになるならば、もはやそれはアメリカでは
ない」と言った。銃社会をアメリカの精神としている。
アメリカの精神が保てているのであれば、それで人が死のうが、秩序がなくなろうが、それで良いん
だという発想である。
逆にアメリカの精神がないアメリカ社会ならば、人が平和となり、秩序があっても関係ないんだとい
う発想である。
・新反動主義者は、 テクノロジーを使えばゲートのないゲイテッドコミュニティをつくることが出
来るしゲートのないゲイテッドコミュニティの中では、テクノロジーを使った仮想現実や拡張現実な
どによって古き良きアメリカをいくらでもエンジョイできるはずなんだという風に考える
・アメリカが堕ち始めるのは1980年代のことで、いわゆる製造業、グローバル化を日本が主導してい
った。
・アメリカは、90年代に加速して、90年代から10年15年を通じて、ITとバイオに力をいれていった
が、IT技術者の収入は半減した。それは、インド等の低所得の国々へのアウトソーシングによるも
の。
・リチャードローティ(哲学者)がこのように言った
「リベラルの思想は、座る椅子がたくさんあるときの思想だ。椅子の数が減ればリベラルは終わる」
これはリベラルという思想の脆弱さを表している
リベラルあるいはリベラリズムは、普遍主義・ユニザーサリズム(境がない)である。
白人のキリスト教徒といった具合に境界線をひいてはいけない。人間であればだれでも同じだという
思想。
・1970年代はリベラルな思想が信じられてきた
1980年代、90年代と時代が移り変わり、座席も減っていき、かつ 見たこともない奴(他人種など)
が座ってる
・実は、リベラリズムは普遍主義だというのが虚構で、リベラリズムというのは偏狭なナショナリズム
と表裏一体じゃないと成り立たないということがわかってくる。
・価値観や生活形式が違う者の間で、立場の入れ替え可能性の問題というのは、成り立たない
最大多数の最小不幸しか成り立たなくなる
・価値観が共有できないから、「我々」という意識がもてない、だから、死は怖い、病気は怖い、
といったネガティブなものの共有によって、なんとかプラッツトフォームを保つしかない状態となる
・アメリカがアメリカとしてあるための今のサイズ、今のキャパシテイで、アメリカがアメリカである
ことがほぼ困難であることが顕在化してきたっていうのが全米各地で暴動化、ライオットとしておこ
っている
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