~宮台真司さんのアーカイブから学ぶ~
2015年3月8日 東大福武ホールラーニングシアター講演記録
■カオスに耐えられる育て方
・宮台氏はお子さんにどういう教育実践をしているのか。
同氏は小学校ではウンコおじさんとして知られている。散歩の方向が一緒の子供たち
がついてくる先々にウンコの絵を描いて歩くので、そう呼ばれている。なので授業参観で
は担任の先生が恐縮するほど子どもたちに絡まれる
・宮台さんは、自宅のTVは、勧善懲悪がない1960年代のコンテンツを子どもたちに見せている。
宮崎駿作品も3歳の頃から見せていた。
宮崎作品は必ず勧善懲悪を超える。すべて本当はいいやつだという思想。昨今は善と悪の
二元論でしか考えられない「白黒野郎」ばかり。グレイゾーンやカオスに耐えられない人
間が出てきている。
・ヨーロッパは道路にガードレールがついていない。景観のこともあるが、リスクやカオスを異常に取
り除くと、依存的な身体になってしまう、生きる力を失ってしまうから計算してリスクを残すしてい
る。
・リスクやカオスを残すことをしてきた外国に対して、日本はそれをしてこなかった。その中で育
っている若い人たちはリテラシーが乏しい。
■感情の劣化とゲイテッドコミュニティ化
・「感情の劣化」について宮台氏は、ネトウヨが先進国でも問題になっている。
・今はインターネットが劣化文化を構成している。同じ穴のムジナが、同じサーキットの中で永久に
サーキュレーションする構造が、インターネット化によってどんどん進んでいる。
・教育とは、自分の子どもを幸せにすることだと思っているダメな人がいるが、教育とは社会をいかに
まともに再生産するのかというのが教育の課題である
・民主主義の基本は人々の理性的な信頼で成り立っているが、人々が分断され、孤立化すると、不安と
鬱屈によって簡単に感情のフックによって吊り上げられる。
そうして全体主義(共同体全体の空気に支配されている)を増幅するようなタイプの人間が増えるとい
うことが統計的にも裏づけられている。
・かつての市民社会が復活しない先進国。ということは一回分解した中間層が元に戻ることもない。
資本主義から言えば、投資をしなければ資本は回らない。投資をする動機を得られるためには、労働
によって得られる利潤率よりも、投資によって得られる利益率の方が高くなければいけない。
そうしなければ資本主義は回らない
・気を付けなければいけないことは、感情の劣化現象が、集合的な決定を歪めるということをいかに排
除するかということ。そのために感情の劣化をしていないような人たちのネットワークを有効に利用
して、行動に対する自己力に結び付けていこうとする
■コミュニティに入る能力
・上記のネットワークの懸念として、感情の劣化現象が、集合的な決定を歪めるということをいかに
排除するか。そのためにゲイテッドコミュニティ(小さなコミュニティ・感情の劣化した人が入っ
てこない小さなコミュニティを作る)が挙げられる。
巨大システムはどうあれ、自分たちは続くという「自分たち=我々」を作り出す)を作り出す時、
我々は条件を備えていなければいけない。
・感情のキャパシティや能力を十分身につけさせよう
音や光ビジョン、体のキャパシティだ。もっと言えば感情の幅、共感能力。臨海年齢が低いのであと
から取り戻せない。認知的発達理論がこの論を学問的にフォローアップしている。
・システムは損得勘定なので、素早く計算できる人間がシステムを円滑にまわして収益をあげることが できることが重要とされる。
しかし、共同体は違う。損得勘定を超える力、内発性があるかどうかがカギ。
・それが共同体を支える力、絆の存在可能性を決める
いざという時に自分がどうなっても助けたいと思う人間がいるかどうか。
それが自分が共同しているということ。
なにがあっても自分の犠牲を払っても助けたいと思う人間がいるかどうか。
・この世界が存続するためにはアリストテレスが言ったような、条件が必要だと考えられる。それは内
発性である。それはどうすれば再生産を寛容できるような社会を続けられるかである。
■立派な大人になれ
・損得勘定を超える利他性の公共性が内側から沸き上がってくるような人間を、社会がどのような
社会の条件を備えていれば再生産できるのか。
自分のこどもを幸せにしたいのはいいのだが、大事なのは人の幸せが自分の幸せであると感じれるか
どうか。
つまりそれが実は「我々」である。一族ではない友愛関係で結ばれた関係であっても、走れメロスの
ような人間、同感能力が必要。
・愚かな人たちは市場主義が自動的に問題を解決すると勘違いしている人がいるが、そんなことは言っ
ていない。市場において「神のみえざる手」が働くのは、市場に参加する人達が同感能力を持ってい
る場合に限る。
・教育の目標をどこに設定しているのか。
・人が幸せになって自分も幸せになれるような、そういう人間になれ。
・人が悲しんでいれば悲しくなり、人が苦しんでいれば苦しくなる。そういう人間に子ども達を育てた
い。そういうものを目標にした様々な課題設定能力と遂行能力を確保するために、課題の設定と遂行
能力のために知識やフィジカルが必要。
・立派という概念を再生してほしい。とにかくあさましいやつになるな。
・立派と勝ち組は全然ちがう。
・他者によって触発された、他者に感染された動機が一番強い。本当に必要なのは感染動機/何がいい
か悪いかは時間が経たないと分からないないものである。何かに一喜一憂する考えはやめるべき。
・自発性よりも内発性。損得勘定よりも内から沸き上がる力。理解よりも感染。マクロをなんとかしよ
うよりも、あるいは顔の見える共同性。
見えない化を克服する絶え間ない努力。これは同感能力によってはじめて成り立ちます。
・俺たちより、あの人たちはどうなの?と思うこと。同感能力が必要。
・今ここから出発すればいよい。知恵と工夫で自分達が享受していたどんなことがなくなったらまずい
のかといったシミュレーションが大事。
■チーム内でうまく向き合っていく具体的なやりかた
・キーワードは居場所。
・居場所を提供して、包摂し、委ねの状態を作ってから、従来の思っていることと違う情報を与える。
みんな自己防衛を持っているから、壁を直進できない。
説得もナンパも同じ。ディフェンスのバリアを外してから情報を発信すればよい。
Comments